ご冥福をお祈りいたします

高校生投手が、ピッチャーライナーを胸に受けてお亡くなりになるという事故がありました。将来ある若い方がお亡くなりになったとのこと……ご冥福をお祈りします。

今回の事故の詳細はまだ明らかとなっておりませんが、野球医学でもっとも想定されるのは「心臓震盪による心室細動」です。動物実験では、左心室の表面にボールが当たったときに最も心臓震盪による心室細動が起きるようです。

このように、ボールが胸にあたってちょっと時間をおいて選手が倒れたときは、この「心臓震盪」による心室細動が起きたと想定することが重要です。

そして、一次救命処置である意識の確認、心臓マッサージ、AEDを取りに行き実行するといった対応が必要になります。

私は医師ですが、たまたまある高校に訪問したときに高校生の一次救命処置をしたことがあります。校長室でソファーに座っていると、高校生が飛び込んできました。「校長先生は?」と。あまりに慌てているのでどうしたのか?と聞いてみると、「生徒が体育館で倒れました」との返事。

慌てて体育館に行ってみると、高校生が一人倒れていて、別の高校生がたった一人でAEDのパッドを胸に貼っていました。心臓マッサージをしながら。

そこで、状況を聞くと、バスケットボールの練習中に突然友人が倒れ呼びかけにも反応がなかったため、心臓マッサージをしながら他の方にAEDを取りに行ってもらい、ちょうどパッドを貼ったところだったようです。

そこで、医師であることを告げて、心臓マッサージを交代してAEDを使用しました。数回AEDを使用した後心拍と呼吸が再開しました。ちょうどそのころ救急車が到着し、病院に一緒に搬送しました。

一人で対応していた高校生に話を聞くと、そのちょうど1週間前に倒れた高校生とともに一次救命処置講習を受けており、その時のことを思い出しながら対応したとのことでした。講習大事ですね。

突然のできごとだったので、救急処置になれているはずの私も緊張しながら対応したことを思い出します。これが非医療者であればなおさらです。しかし、今回の福岡での事故のように、グランドで起きた場合は医療者がいるとは限りませんので、指導者や保護者が一次救命処置を学ぶことが大切なのだと痛感する一件でした。

この事故を機会に、あらためて一次救命処置講習を受講することをおすすめいたします。