技術はディトレーニングによってどのくらい忘れるのか

武蔵小杉のベースボール&スポーツクリニックの豊田です。

今回は、ディトレーニング(長期に渡って練習をしないこと)によって、スポーツの技術をどのくらい忘れてしまうのかということについて、私が参考にしている知見をご紹介します。

科学的には、運動の記憶のような体で覚えたことをは忘れにくいと言われています。例えば、一度、自転車に乗れるようになると、長い間、自転車に乗っていなくても、ほとんどの人が前と同じように自転車に乗れます。しかし、これは日常生活レベルで自転車に乗るという比較的、大まかな運動のことで、野球のような正確さとスピードを求められる運動とは異なります。

理化学研究所が行った運動の記憶に関する研究によると「精緻な運動の記憶は、残念ながら長期記憶になりにくいことが分かってきました。短期記憶の大まかな情報だけが長期記憶として残ると考えられます。」と言われています。言い換えると、長期に記憶されているのは、運動の概要だけで、精緻な運動は短期にしか記憶されず、忘れやすいということです。

このことを野球のキャッチボールに置き換えると、一度、キャッチボールができるようになると、その運動の概要は長期記憶として記憶されているので、しばらくの間、キャッチボールをしていなくても初心者のようにキャッチボールができなくなることはありません。しかし、コントロールよく速いボールを投げるというような技術は、ディトレーニングの間に忘れてしまうことがあります。

アスリートのみなさまにおかれましては、例えば、リハビリ期間中やコロナウイルス感染症による練習の自粛期間中には、体力の維持だけでなく、可能な範囲で技術力を維持する練習を行い、練習が再開された際には、焦らず段階的に技術練習に取り組んでみてはいかがでしょうか。

育成コーチ 豊田太郎

参考文献
独立行政法人理化学研究所(2010)RIKEN NEWS No.348「運動の長期記憶がつくられる場所を発見」

ベースボール&スポーツクリニック
https://baseball-sports.clinic
TEL 044-711-8989